実用新案について
■実用新案の保護対象
実用新案の保護対象は「物」の考案に限られており、「方法」の考案は対象となりません。物の考案は、装置、構造、物自体などに関するものです。(なお、実用新案の保護対象は、物品の形状、構造、組み合わせの考案に限定されます。方法の発明や医薬品、化学物質自体など、特許では保護対象となっても実用新案では保護されないものもあります。)
また、特許は高度な技術的なアイデアを保護できますが、実用新案は比較的簡易な技術的なアイデア(いわゆる小発明)を保護できます。高度な技術的なアイデアでも実用新案で登録することができます。
参考
実用新案登録第3158637号
積層式収納装置
■実用新案は無審査主義で迅速に登録
特許は審査を経て特許権が付与される審査主義です。一方、実用新案は形式的な審査だけで登録される無審査主義です。実用新案は、特許に比べて早期に権利化することができます。が、特許の方が権利の安定性が高いといえます。
■実用新案権の効力=他人の模倣を防止できるか?
◆「登録」と「権利の有効性」は直接的には連動しません。
実用新案の場合は、「登録されること(権利が発生すること)」と、「有効な権利かどうか(実際に他人に権利行使できるかどうか)」、は別問題です。実用新案は、無審査登録ですので既に同じアイデアや似たアイデアが存在していても登録されます。
◆「誰でも簡単に思い付くようなアイデア」は実用新案権でも保護されません。
実用新案で「登録された」といっても、例えば、そのアイデアと同じものが既に存在したり、誰でも簡単に思い付くようなものの場合には、有効な権利として認められず、「実際には他人に権利行使できない」場合があります。明らかに新規性、進歩性がないような無駄な出願は控えるべきです。
◆「権利の有効性」を確認するには
実用新案権が権利として有効かどうかは、新規性、進歩性等の要件を満たす必要があります。実用新案権の権利の有効性の判断材料の一つに、特許庁が作成する技術評価書があります。技術評価書は、特許庁の審査官による鑑定的な評価であり、技術評価請求することで誰でも取得できます。
◆権利行使する際の注意点
実用新案権に基いて他人に権利行使しようとする場合には、事前に特許庁に技術評価請求して技術評価書を取得し、その技術評価書を提示して警告する必要があります。その際、技術評価書の評価内容が権利の有効性が認められたものであることが必要です。技術評価書を提示せずに警告や権利行使を行った後に実用新案権が無効になった場合には、権利者側が逆に相手から損害賠償されるおそれがあります。
■実用新案権取得のメりット
◆活用次第では特許権と同じように機能します。
実用新案は無審査登録のため、特許権に比べて不安定な権利ではありますが、事前に技術評価書を取得し、相手に提示して警告する等の一定の条件を満たせば、特許権と同じ様に、差し止め請求や損害賠償請求等の権利行使を行うことができます。実用新案権もうまく活用できれば、低コストで特許権に近い効果を発揮できる場合があります。
◆同様のアイデアについて他人の権利化を防止できます。
実用新案が登録されると登録番号が付され、登録公報も発行されますので、権利を取得していることをアピールしたり、同じアイデアについて他社が権利化するのを防いだり、他社の参入を牽制したりするのにも役立ちます。
◆小発明の保護、早期権利化、低コストの面で活用できます。
実用新案は、特許のようにアイデアに高度性が要求されないため、小発明の保護に向いています。また、例えば、重要度が低く自社では実施しないが、とりあえず権利を取得しておきたい場合に有効です。
一方、基本技術、重要度が高い技術、長期的に利用する技術等について権利を取得したい場合や、日本だけでなく外国出願を考えていたり、他社へのライセンス契約を考えている場合などには、実用新案よりも権利として安定性が高い特許の方が向いています。
■出願までの流れ
1 考案の把握最初に考案(アイデア)の内容を伺います。会社訪問・来所等で直接お会いしたり、電話、FAX、メール、試作品郵送(小物の場合)等で行います。まだ具体化していない頭の中にあるだけ、試作中、試作品完成のいずれの段階でもOKです。他人が同一のアイデアにつき既に特許出願・実用新案出願している場合も多く、早い段階で相談くだされば、無駄な投資を回避することができます。世にない新製品のみならず、既存製品の改良品や類似品であってもOKです。
2 特許調査
伺ったアイデアについて、実用新案の対象となるか判断し、対象となれば、他人が既に特許出願や実用新案出願していたり、特許や実用新案登録を受けていたりしないか当所で簡易調査します。1週間程掛かります。原則無料です。
3 出願前準備(アイデアの具体化、実施例の豊富化)
他人の特許出願等がなく、実用新案登録出願を希望される場合、出願可能なレベルまでのアイデアの具体化と実施例の豊富化を行います。この作業が最も重要で<実用新案権の強さ>が決まります。当所と依頼者との共同作業となります。
4 出願書類の作成
3の結果に基づき、過去の実務経験を踏まえて実用新案登録出願に必要な図面と文書を作成します。
5 出願書類のチェック
出願書類の案文が出来ましたら依頼者にお送りしますので、内容の追加・修正等のチェックをして戴きます。
6 出願
チェックに従い修正後、特許庁に出願致します。
7 出願控え書類の送付
依頼者に出願書類一式の控えをお送りします。
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